武器輸出規制見直し
[2004年10月12日] [政策 | 外交] [コメント (2)] [トラックバック (0)]
外交担当スタッフの小池です。
年末の防衛大綱見直しに関連して、従来の「武器輸出三原則」が変わろうとしています。内容および提言をまとめて発表しましたので、Blogでは長文で恐縮ですが以下お付き合いください。
『政策空間』 vol.17 (2004.10)
【安全保障】「武器輸出三原則」見直し問題が突きつける日本の課題
http://www.policyspace.com/vol17/koike_masanari_vol17.html
今年度末に予定されている自衛隊の装備、運用などを見直す防衛大綱の改定に伴い、武器輸出を巡る方針が再度転換の時期にきている。きっかけはミサイル防衛(MD)システムの導入であり、政府が決定した日米間の共同生産に踏み切るにはこれまでの「武器輸出3原則」の見直しが必要となってくる。これは日米関係の今後という点に限らず、国家防衛のハード面での基盤をいかに維持するかという重大な点にも繋がる。更には、国際的輸出管理体制のあり方、そして朝鮮戦争以来この50年間常になし崩し的に済まされてきた武器・武力というものの位置付けを今一度確認すべき時期に来ている。
武器の輸出を規制する動きは、1960年代後半に野党の追及に対する回答として佐藤内閣から始まった。その後野党だけでなく省内でも慎重意見が高まり三木内閣では輸出を全面的に「慎む」ものとなったが、中曽根内閣時代には日米関係を重視する立場からも対米技術供与に限り緩和されることになった。今後の見通しとしては政府・自民党は当面はMD、イージス艦装備を対象にした共同生産への緩和、将来的には対象国を限定した輸出の拡大へと舵を取ろうとしている。
検討すべきポイントは三つある。一つは調達・生産コストといった経済的効率の問題であり、もう一つは防衛産業の技術基盤をも含めた産業の維持をどうするかという問題。これらは安保戦略、防衛基盤に直接的に関わる問題でもある。そして最後にやや間接的及び広範な問題として、今回の転換が及ぼす国内外への政治的影響が挙げられる。
まず自国の産業が必要かどうかという議論については、安全保障の観点で考えれば総論で異論はないと思われる。輸入品が多くなることはつまり装備にブラックボックスの部分を抱える事が多くなり輸出国への依存が高まる事に繋がる。また輸出国も当然の戦略として自国より性能が一段劣る装備を相手国に部分的に開示しており、輸出国の思惑に自らの防衛方針が左右されかねない。
それでは調達コストに関してはどうだろうか。結論から言えば、現状のように市場が限定され量産効果が期待できない国産装備は輸入品と比べて割高であり開発期間も長い。例えば比較的最近の機種においても、支援戦闘機や戦車に対米比較で2-3倍のコストをかけ開発にも約14年といった長期間を費やしている。更に日本全体の経済規模が停滞し、それを母数とした軍備費の割合がほとんど定率で全体のパイが限られている中では、MDの予算枠拡大は自動的に通常装備の調達幅を減少させる。この結果通常装備に関しては市場は更に縮小し、既に見られる防衛産業内での撤退・再編の傾向が加速してコスト削減の競争原理が失われていくのみならず産業基盤そのものの存続が危うくなる。
装備品が高度化し、かかる開発・生産のコスト及び期間の負担が大きくなっている最近の傾向では、各国独自で開発するよりも多国間での共同開発を進めるケースが一般的となっている。F-16等の後継機となるJSF戦闘機の開発はプログラム経費250億ドルと巨額であり、米英を中心とした11カ国が出資し要求性能への影響及び情報の共有といった利益を得ている。日本がこうした共同開発・生産に参画する事は、コスト削減および最先端の技術へのアクセス拡大に繋がり、国内防衛基盤の空洞化をせき止める効用が予想されるも、その為には現状の規制を見直す必要に迫られる。
一方、自ら高らかと謳いあげた理念・方針を転換するのであれば、大小を問わず何かしら内外への影響が発生する事を想定しなければならない。国内においては過去の輸出反対派が唱えたような、武器輸出が日本の再軍国化に繋がるといった不安は比較的治まってきたと考えられるものの、「武器輸出=死の商人」といったネガティブなイメージは依然として燻り続けている。つまり「武器が緊張を助長している」といった見方が浸透している為でもあろう。但しそれは国内だけではなく例えば東南アジア諸国への輸出は、米台の武器供与にも懸念を募らせる中国を少なからず刺激することが想定される。米国においてでさえも過去に見られたような過剰な反応は影を潜めたとはいえ、防衛産業において日本が席巻し米国を脅かすような事は決して望んではいない。更に日本自身としても自らの輸出が顕著に拡大する事は国際的な軍縮傾向に逆行する動きと捉えられ、当該分野において主導的取り組みを果たそうとする足を自ら引っ張りかねない。つまり方針転換の説明責任は予想以上に大きいことを自覚しなければならないのである。
これら経済・政治的側面を総合的に勘案した上で今後の舵取りを行うべきだが、その際に留意しなければならないのは、まず規制の目的を再確認する事である。目的は「安保の確保」であり、それには(1)強固な防衛基盤を維持していくことは目的に矛盾せず、また(2)周辺・国際地域をも含めた安全保障をも確保していく事が目標の達成に繋がる。
基本理念を残した上で上記(1)の達成にベターな選択は、輸出拡大は目指さずに産業基盤を何とか維持する努力を尽くすことである。実際に米国は別格として、想定される年間数十億ドルといった輸出の解禁が産業に飛躍的な量産効果をもたらすかは疑問である。共同開発・生産による先端技術へのアクセス拡大、そして先進国比でも顕著に少ない研究開発費用の増大といった対策が望まれよう。特に日本の得意分野としての両用技術に注力した開発促進は、戦略的に軍事-民生技術へのスピンオン・オフを促進する方針も生まれてくる。また比較優位を持つことはクロス・ライセンスや輸入交渉を優位に進めることにも繋がるのである。
次に(2)の広範な安保環境の確保の為には、自らが「不拡散政策」を通し軍備拡散の当事者となる事を抑制する一方で輸出管理体制、拡散防止への取組みに積極的に関与していく姿勢が求められる。それには核や生物・化学兵器等のWMDはもちろん、ミサイルや通常兵器に関しても輸出を管理する枠組みの強化が求められる。現在の輸出管理は企業の自己申告が原則であり、近年でも日本企業が関わったリビアや北朝鮮への不正輸出が明らかになったりと輸出管理の課題が浮き彫りとなっている。そしてその為には、複雑化する規制対象品及び対象国を再検証し当事者に徹底しなければならない。
当問題を透かして見えるのは、普遍だと思われた自国の理念と変遷する国際情勢、そしてこれらに基づく安保戦略と防衛基盤の四角形のバランスをどうするかというお馴染の構図である。これは武器輸出規制に限ったものではなく、専守防衛や武力行使の一体化論、しいては非核三原則といった政策にも同様の課題として突きつけられる。根本にあるのは、理念を、「力」や「利益」と同様に国際関係を構築する「価値」へと結びつける戦略・努力が十分で無かった事、そして武力を自らが制御できない危険なものとして捉えそれに鎖に縛り付けておく事によって平和が保たれると信じていた認識である。だが情勢は刻一刻と変化し、今や自らの政策を再考慮せざるを得ない状況に陥っている。鎖を断ち切っていく事自体には異論がない。だが武力そのものの位置付けを再度怠れば予想外の意志を持ち得る事を忘れてはならないのである。
(koike@fujisue.net)
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コメント
武器輸出三原則に関する提言、拝読しました。
ここで遅ればせながら私見を思いつくままに寄せさせて頂きます。
小池さんの提言は官邸の安保防衛力懇談会の報告書発表を受けての提言かと推察いたします。この報告書の三原則に関わる項を大雑把にまとめてしまうと、防衛産業の維持という観点から、国内的には「選択と集中」、そして国際的には「国際分業体制への参加」という解決策が提示されており、その妨げとなっている武器輸出三原則は緩和されるべき、ということのようです。
防衛産業の問題を先端技術産業の維持・育成という切り口で見るのであれば、懇談会の結論は論理的な帰結なのでしょう。さらに、禁輸という枠組みを取り払ってしまう以上、それに代わる新たな枠が必要になるわけで、不拡散政策の再整備という小池さんの主張もその通りだと思います。
しかし、防衛産業政策を一産業政策に矮小化させてしまって良いのでしょうか。
いずれにせよ、まず検証されるべきは日本の防衛産業の実態と、同産業の日本の国防への寄与の度合いなのでしょう。既にそういった検証はしかるべきところでなされた上での三原則見直し議論だろうとは思いますが、私個人はまずそのデータを見てみたいです。
・・・というのも、「防衛産業の生産基盤・技術基盤の維持は日本の安全保障確保の為にも重要な政策目標である」という一般論に異論はありませんが、果たして、国際分業体制に参加しないと日本の安全保障はどの程度、脅かされるのか、という具体的な検証が議論のスタートであるべきです。経団連がまとめ、公開した資料に目を通す限りでは、商売として継続していくには厳しい環境になりつつあることは書かれていますが、それが具体的に、国防にいかなる悪影響を与えるのか、という絵は見えてきません。
今、三原則見直し問題で問われているのは、「独自の防衛装備を整備できる産業力」と「武器非輸出国ブランド」の費用対効果ではないかと感じるわけです。
憲法9条をめぐる論戦で、護憲派を批判するときに、「憲法残って国滅ぶ」などと言われますが、武器輸出に応用すると、「三原則残って産業滅ぶ」となるのでしょう。では極端な話、「産業が滅ぶ」とどうなるのでしょう。もちろん、完全に滅んでしまってはいけないわけですが、国際開発・生産体制に参加し、世界最先端の技術を、ノウハウをハードウェアの分野で持っておかなくてはいけないところまで、今、日本は追い詰められているのでしょうか。
言い換えるならば、防衛装備を海外に一方的に依存するという構図は果たして今後も維持可能か、ということではないでしょうか。もちろん、海外依存の構図はコスト高にも、日本の軍事技術基盤の低下にも、防衛産業存続の危機にもつながり得ることだとは思いますが、それは今に始まったことではなく、ここ数十年間、続いてきた現象です。防衛予算の削減が具体的に議論されるようになった昨今、経済界が大きな懸念を示すのは理解できますが、何故、今このタイミングで方針を大きく転換すべきなのかを政府は国防政策の観点から説明する必要があります。
私は当面は海外依存の構図は維持可能なのではないか、という気がしています。(よく知らないがゆえに、事実関係をしっかりと把握したいのですが・・・。)ただし、日本を巡るハード面での安保環境がそれを許さなくなれば、禁輸措置の見直しは不可欠であることはいうまでもありません。ただし、それまでの借りた時間を使って、「武器非輸出国ブランド」を活用する機会を積極的に探ってもよいのではないか、と思います。
私が個人的に三原則撤廃を慎重視するのは、兵器の生産、取引を邪悪な行いだと見るからではなく、どうもこの議論が産業政策という方角から当てられた光だけで浮き上がっているように思えるからです。
日本政府が防衛産業政策をどうするか、というのは、本人は一産業政策のつもりでも外から見れば、日本政府が安全保障について何を考えているのかを示唆する「シグナル」になり得るわけで、その重要性を十分に認識してから行うべきだと考えます。
さらに、この問題を一般的な先端科学技術政策とからめて正当化することは焦点をぼかしてしまうとも思います。(もちろん、防衛産業にそういう側面はあるわけですが。)①軍用・民生技術スピンオフは存在するだろうが、それはあくまで副産物であり、民生技術の開発を目指すのであれば、最初からそこにお金を注ぐべきで、日本はこれまでそうした道を誇ってきたはず。②先端技術の確保が目的であれば、防衛産業以外にも国際交流を促し、市場を開放すべき分野が存在し、その対応を同時進行で進めていなくてはいけない(医療機器産業など)。
つまり、産業政策を口実にせずに、これは国防政策なのだ、と正面から取り組むべきだろうと思うのです。
そう考えると、独自のハード技術を用いた高度国防国家を目指す前に、兵器の運用を高める制度整備にまずは注力しつつ(費用、産業能力等々それなりの犠牲は伴いますが)、その間に「武器非輸出国ブランド」活用の道を探れないものでしょうか。もちろん、小池さんが指摘されるように、こうした「理念」を実際の力にする努力を怠ってきたのは事実だと思います。ただ、ここ数十年の実績はそれなりのバーゲニングパワーとして使い得る気もするのです。(分かったようなことを書きますが。)もちろん、私は安易な「平和国家」「ソフトパワー大国」を提唱するものではありません。
ただし、産業というものは一般的に、国際環境の変化に応じて、急にその能力を拡充することが無理なのも事実。それだけに、長期的展望に立った、ニュアンスを効かせた政策が必要なわけですが、そんな当たり前の結論ではつまらないですね。
技術と国防、というのは面白い分野だと思われませんか。もっとも、軍事の話をするならば、基本であるわけですが。
投稿者 浅野 : 2004年11月12日 17:45
世界は軍縮傾向でもなんでもない
軍縮ってのは軍事費が減ったり兵士の数が減ることだろう
まあ日本は軍事費も兵器の数も減っているから間違いなく軍縮しているが、世界の殆どの国は軍事費を増やしている
軍縮しているのは世界で日本だけなのにあんた頭大丈夫か?
あんたみたいな人は完全に軍備放棄する日が来るまで日本は軍拡しているとか、近隣諸国へ配慮をとか言い続けるんだろう。
世界の軍事費ランキング
1アメリカ
2中国
3ロシア
4イギリス
5フランス
6日本
7ドイツ
8イタリア
9インド
10韓国
11サウジアラビア
12ブラジル
特に日本のお隣の中国、韓国、ロシアは毎年10パーセント以上で軍拡している
何でこの国には軍縮要請しないの?
GDPや、歳出に占める割合も日本よりはるかに多いし内容も陸軍ではなく、攻撃的な空軍、海軍主体に強化している
特に韓国は去年核開発していたことが明らかになった上今でもアメリカから輸入した核物質が行方不明になり国連から制裁を受ける可能性も出ている
まあ日本のマスコミは絶対報道しないからあんたは知らないフリが出来るだろうね
どっちがアジアの平和を乱しているか言うまでも無い
今の日本は冷戦期以上の危機になりつつあるのにそれに対する備えをするのが軍国主義だというのなら話にならんぞ
あんたはぜひこの国に「アジアの声」を聞かせてやれよ
投稿者 IPP : 2005年10月11日 15:46







