「危機を活かす」(堺屋太一著)を読んで
[2004年11月03日] [日記 | 読書録] [コメント (10)] [トラックバック (0)]
またもや古本屋で買った本です。
なんと、1993年発刊です。
この10年をきちんと予測した本
読んでびっくりしたのは、「93年にその後の日本をきちんと予測している」ことです。
例えば、以下のような点が当たっています。
○歴史上、民主主義を破壊しようとする勢力は、「政治家の金銭疑惑を攻撃」する。大正デモクラシーで民主化が進んだが、帝人事件、珍品3品事件、賞勲疑獄などの金銭問題がマスコミで騒がれ、「政治家=汚い」というイメージを作られた。結局、515事件で犬養首相が暗殺された時に、新聞は青年将校の活動を「義憤」と書き、青年将校の助命嘆願が50万通も集まった。
>>90年代から現在にかけて「数多くの政治家の事件」が起こり、どんどん政治に対する信頼と期待が落ち、同時に投票率も低下していると藤末は思います。
○冷戦が終了して、「国連中心主義」といっているが、これは「米国追従主義」の言い換えに過ぎない。
>>現在も議論されている民主党で議論されている「国連中心主義」の話、古い議論だったのですね。
○「コスト+利潤=価格」の崩壊。規制業種になるとコストに利潤を乗せた価格になるが、これは段々ともたなくなる。
>>堺屋さんはタクシー料金を例に出しましたが、これは価格規制がなくなりました。今後、電力、電車などの価格規制をなくさないといけません。
○ワンセット主義の終焉。国内で全ての産業を持つといった産業政策や1社で色々な事業を持つことはできなくなる。
>>今、電機メーカは集中と選択をやっているところです。予測の実現には10年かかったことになります。
○野球球団は赤字が多い。これはテレビ会社などの系列のせいで、価格競争がないためである。
>>まさしく今、問題になっています。
○教育の供給者保護から消費者支援に考えを変えることが必要である。大学への予算の分配も役人が行うのではなく、学生に奨学金の形で渡し、学生が学校を選んで入学して授業料として収めるようにすべきである。
>>同感です。東大に居た時、研究所の新設を文部省に説明に行きました。文部省の担当者の横柄な態度を今でも忘れることができません。本当にこの人は「公僕」なのか?政府の権限を自分の権限と勘違いしているのではないか?と本当に思いました。
私は教育といった国の基盤に関する問題を文部省と言う役人がブラックボックスの中で決めることを止めさせないといけないと思っています。(ブラックボックスとは、一部の審議会の委員名簿が公表されていないことをいいます。例えば、ゆとり教育の方針を決めた審議会のメンバーはだれだか分かりません。)
○戦後の3つの信仰:「絶対平和信仰」「成長終身雇用」「親子贈与問題」は終焉する。
>>絶対平和信仰がどうなるかはこれからですね。
感心したポイント
○参議院の活性化のため、省庁別の委員会(経済産業委員会、国土交通委員会など)を止めて、税制委員会、国際問題委員会など横割りの委員会にすべき。衆議院と同じ省庁別委員会であるからカーボンコピーになってしまっている。
○責任を問わない日本。事例として、真珠湾攻撃の時、当時の駐米日本大使館職員がカードゲームで遊びすぎて遅刻し、暗号の解読が間に合わず、「太平洋戦争は、日本の不意うち」になってしまったが、「この二人の職員は、なんの咎めもなく。いずれも外務事務次官となり、勲一等を叙勲した」。
>>これはとんでもない話です。
○食料安保論は誤り。50年代に一人当たり年間140キロだった米の消費は90年には70キロに減っている。米中心の保護政策が米農業の改革を遅らせ、米価の高騰を招いた。
>>今でも誤ったままです。
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コメント
うーん、このような予測ものに藤末さんが動じることなく進んでいただきたいので、書かせていただきますね。
実は、堺屋太一氏は歴史を語るときかなり間違えています。
以前小泉メルマガでも、江戸時代を中心に現代をなぞって記述されていましたが、事実関係が18カ所間違えていました。うち数カ所は致命的な誤りで、誤った事実を元に論を展開し、現代を批判しておりました。
結構都合良くこじつけているのです。
さて、なぜこのようなことを書くかと言いますと、いわゆる予測ものの類は、ノストラダムスの大予言に象徴されるように「読み方によっては当たるように見える」という書きぶりがうまいか下手かの一点につきます。
こじつけでそれらしく書くが一番危ない、そう思います。
例えば、挙げられた部分についていえば、
-民主党ブーム、小泉ブームに象徴されるように、書いてあるほど(殺されても賞賛されるほど)信用は失墜していない。
ただし、信用度が低いのは事実。
-「国連中心主義」と「米国追従主義」は今の日本では正反対の意味に使用されている
-価格破壊は長期間持たない。規制業種は「コスト+利潤」ではない。利潤の意味をはき違えている。電車の例で言えば、JR東日本の初乗りが相当長期間固定されているように規制が価格に影響を多大に与えているわけではない。
等々・・・
ましてや学生に奨学金なんて論外です。多くはカラオケ代や携帯代で消えるでしょう。
※ちなみに藤末さんの考え方は賛成です。そういった不逞の役人はどんどん実名を出して掲示板などで叩くべきです。
「予算はお前の金じゃないだろう」という根本を代々木の新人研修などでキャリアに教えているのでしょうか?疑問を持ちます。人材教育の問題でもあると思います。
また、真珠湾関係で言えばこれは本当に事実ですか?俗説でしょう?
それと、参議院が横割になれば、カーボンコピーにならない、というのは全くの誤りだと思います。
横割りにしても質問内容が総花的である現状では、結局「質問内容」という観点でカーボンコピーになり同じです。
むしろ
・質問者間の連携をきちんととって、ストーリーのある質問にする
・解散がないことを重視し、法案を勉強し、法案の中身をきちんと質問する。出来れば議員立法を中心に議論する。
などの方が「良識の府」を全面に出せると思います。
でも一番私がいやなのが、堺屋太一氏のように、「有名な偉い人」が言えば、事実でなくとも事実にされて、歴史的事実がゆがめられることです。
本当にこれだけは勘弁して欲しいです。
そういった意味で、今の日本はかなり危ない「肩書き社会」になっていると思います。
投稿者 ハーデス : 2004年11月04日 00:24
ハーデスさん
的確なコメントをありがとうございます。
堺屋氏の話に歴史記述の間違いがあるとの指摘には、正直驚いています。堺屋氏の本は相当読んでいますので、間違って知識が入っているのではないかと自分の知識の信憑性にも影響しますので。
さて、
<<参議院が横割になれば、カーボンコピーにならない、というのは全くの誤りだと思います。 横割りにしても質問内容が総花的である現状では、結局「質問内容」という観点でカーボンコピーになり同じです。 むしろ・質問者間の連携をきちんととって、ストーリーのある質問にする・解散がないことを重視し、法案を勉強し、法案の中身をきちんと質問する。出来れば議員立法を中心に議論する。>>
この点、ご指摘のとおりです。よく内情をご存知だという感じです。私も参議院議員は、解散がない6年間という時間を頂いていますので、衆議院にできないような「長期的な」「分析された」議論をすべきだと思っています。最終的には、やはり議員立法を出すべきです。
私も折角参議院議員とならせていただいたので、勉強して、できれば議員立法していこうと思います。応援ください。
投稿者 藤末健三 : 2004年11月05日 06:13
少しだけ書きます。
堺屋氏の件の代表的例は幕末・明治維新の捉え方の間違いです。
氏は幕府の改革を「官僚の内からの改革」、幕末を「外からの改革」(あるいは上からの改革と下からの改革という対比)と位置づけ、階級社会から市民社会など高く評価し、「平成維新」など主張します。
しかし、現実的には幕末・明治維新は武士階級内での闘争に過ぎません。
事実、「四民平等」といいつつ明治初期には「藩閥政治」と言われ、普通選挙制度の導入には何十年も要しています。
維新の代表的な改革に非武士層がどれだけ関与したか、勝者である薩長が軍部で力を持ち続けたことを考えると、その点は明らかでしょう。
歴史の意義はそこに政治、経済、社会その他すべての成功例と失敗例があるからです。だからこそ、それを参考に人間社会は成長してきたと考えます。しかし、誤った歴史を基に政策を唱えるというのはある意味「架空の歴史」を参考にしているわけで、非常に良くないことだと思うのです。
投稿者 ハーデス : 2004年11月09日 23:01
有名、高名な先生が書かれたものは要注意です。ネームバリュ-で信じてしまうからです。無名ならばしっかり検証しますがついうっかり丸呑みしてしまいがちです。・・・・・・・・・・・東大のある教授のご意見に疑問を感じ質問したら、その先生、いわく、「これはMITの教授が言ったのをパクったのである。」と平然としていました。MITのノーベル賞を取った大先生が言ったことだから間違いないという頓珍漢な答えが返ってきてビックリしました。答えになっていない。そこでMITに問い合わせたところ、この東大教授のミスだったようです。よく理解していなったようです。・・・・・・・・・・とかく高名、有名な方の著書は鵜呑みにしてしまいがちですがやはり間違いは間違いですからしっかり検証する必要がありそうです。・・・・・・・・・・ぼくの堺屋太一氏の印象ですが、評論家と言うより小説家のような気がします。取材が甘い気がします。
投稿者 野澤保博 : 2005年02月17日 10:08
野澤さん
コメントをありがとうございます。
自分も外国の研究者が仰っていることを相当引用させていただいているので、赤面です。
でも、段々と肩書きが通用しない世の中になりつつあるとは思っています。
新しい分野に入るのに「通行手形」として肩書きは必要ですが、入れば比較的自由な競争が求められるようになるつるあると感じます。
役所や大学は遅れていますが、そのうち必ず実績・実力・実質が重要視されるようになると思いますし、なるようにしないといけませんね。
投稿者 藤末 : 2005年02月17日 19:11
>> ましてや学生に奨学金なんて論外です。多くはカラオケ代や携帯代で消えるでしょう。
この人は何を理由にこんなことが言えるんですか?
投稿者 幾何学 : 2005年07月22日 12:40
たぶん、堺屋氏に嫉妬しているオッサンの妄想でしょう。
投稿者 タカタニ : 2006年05月16日 16:05
たぶん、堺屋氏に嫉妬しているオッサンの妄想でしょう。
投稿者 タカタニ : 2006年05月16日 16:06
堺屋氏、以前のエントリで疑問を呈したことがありますけど、ここでも結構突っ込まれているんですね。彼の最大の"功績"である大阪万博については城山三郎の「もう、きみには頼まない―石坂泰三の世界」によって婉曲的ながらも"真相"が明らかにされてますが、堺屋氏の言動を一通り"検証"してみたルポって無いものなんですかね?これほど世論に影響を与え官民に少なからず影響を与えている人物なんですから、その言動の正否をチャンと調べる作業は不可欠な筈なのですが・・・・・
あと、
>>ましてや学生に奨学金なんて論外です。多くはカラオケ代や携帯代で消えるでしょう。
>この人は何を理由にこんなことが言えるんですか?
実際にカラオケ代や携帯代で消えるかはともかくとして(笑)、単純に奨学金を支給すれば済む話でも無いと思いますよ。奨学金を支払う基準をどうするかと言う問題があるし、下手したら良い成績を収めるための教育投資に耐えられる富裕層が有利になり兼ねないという問題もあります。それに肝心の大学側の運営に対するインセンティブと言う点は堺屋氏の提案でも何も解決できないのですよ。藤末様の経験も一面の真実ですが、東北文化学園や浅井学園の事件で判る様にハードの整備などでは安易に補助金が出てしまうのも反面の真実である訳です。
夜遅いのであまり多くは語れませんが、表面的な字面だけ追って重要な事実(奨学金が日本と比べて格段に充実しているアメリカや大学への授業料が桁違いに低い欧州)を見落としてしまうのは何の利得にもならないと思います。
投稿者 杉山真大 : 2006年05月22日 01:35
>>杉山真大さん
私は、奨学金の充実 がいいと考えます。授業料 が安いドイツなどは、留年による モラトリアム が問題になっているようです。文部科学省の職員が税金を配付するという仕組みを変えるべきだと考えます。
投稿者 藤末 : 2006年06月02日 11:32







