ODA委員会 中間報告書(ODA政策への提言)を安倍首相に
[2007年06月13日] [日記] [コメント (0)] [トラックバック (0)]
ODA委員会で今まで議論してきたODA政策を取りまとめた中間報告を安倍首相と麻生外務大臣に提言しました。
ODAは、我が国が国際社会において外交を進めるための貴重なツールですが、今までは国会の関与がほとんどありませんでした。
参議院では、その6年間という安定した任期を活かし、ODAをより長期的な視野から一層の活用を勧めるため、ODA委員会を設置したものです。ODA委員会は衆議院にはありません。
ただ、今までは議論で終わっていましたが、今回、初めて首相に直接提言するという形を取ることになりました。
今回の首相への提言は、ODA委員会の存在価値をより高めるものです。山崎委員長や理事の皆様の努力に感謝したいと思います。
さて、提言のポイントは、7つです。タイトルは、-新たな国際援助の在り方に向けて-となります。
1.援助ビジョンについての明確な国民へのメッセージ
(1)適正な援助水準に向けた事業量の確保
(2)「選択と集中」による援助戦略と「地域戦略方針」の策定
2.我が国の援助資源の総合的活用と途上国との「互恵」関係
3.日本型援助の知見を活かした「平和構築」の推進
4.「援助量」大国から「援助人材」大国へ
(1)「人間の安全保障センター(仮称)」の創設
(2)国際援助活動におけるキャリア・パスの確立
(3)新JICA発足に伴う「援助力」の強化
5.東アジアの成長と統合に向けた我が国援助の役割
6.アフリカの貧困削減と支援理由の明確化
7.参議院による援助政策への積極的関与
今、参議院事務局の皆様が英文化を進めておられます。
事務局の皆様本当にありがとうございます。
提 言
-新たな国際援助の在り方に向けて-
参議院政府開発援助等に関する特別委員会は、第164回国会召集日の平成18年1月20日に設置された後、約1年半にわたり、政府開発援助(ODA)を始めとする国際援助・協力に関する諸問題について積極的に調査に取り組んできた。
特に第166回国会においては、我が国の国際援助が抱える諸課題をテーマに、集中的に内外の識者を招き意見を聴取し、委員による質疑及び意見表明を行った。
今般、本委員会は、参考人質疑を踏まえ、我が国の新たな国際援助の在り方に向けて、以下7項目から成る提言を取りまとめた。
1.援助ビジョンについての明確な国民へのメッセージ
(1)適正な援助水準に向けた事業量の確保
ODAは、我が国が国際社会において外交を進めるための基盤であり、我が国の安全や経済的繁栄、資源の確保など国民生活に直結する国益を実現するための最も重要な外交手段の一つである。
同時に、ODAは、「人間の安全保障」を踏まえ、グローバル化の進展の中で拡大する途上国の貧困問題や地球環境、感染症等の地球規模問題への対処、省資源対策など国際益に貢献するものであり、このことは我が国の国益にも資するものである。
しかしながら、我が国のODA予算はこの10年間で約4割削減され、一方で他の先進諸国は援助額を増加させていることから、我が国の国際社会における存在感は薄れつつある。
我が国が引き続き、国際社会において重きをなし信頼を得ていくためには、ODA事業量の削減に歯止めをかけるとともに、適正な援助水準に向けて純増による量的確保を行うべきである。
このため、当面、「ODA事業量の100億ドル積み増し」、「アフリカ向けODAの倍増」を始めとする我が国がこれまで表明してきた国際公約を誠実に履行することが不可欠である。加えて、「人間の安全保障」の観点から、貧困や感染症対策等の分野に予算を重点配分すべきである。
なお、事業量の確保に当たっては、一層援助の質を高めるとともに、被援助国・拠出先国際機関に対する継続的なモニタリングを行うなど、援助効果について徹底した評価を実施し、正すべきことは正し、これまで以上に国民の支持と理解を得る努力が必要である。
(2)「選択と集中」による援助戦略と「地域戦略方針」の策定
これまでの政府のODA改革の努力にもかかわらず、「なぜ援助を行うのか」という国民の疑問に明確な説明がなされたとは言い難い。
今後、「海外経済協力会議」において、今までの我が国の援助において他の主要援助国に対し比較優位を有した開発、環境、省資源技術など、被援助国の自立にとってより有益な分野への徹底した「選択と集中」を行うなど、我が国の援助戦略を議論し、その内容を原則公開するとともに、国民への明確なメッセージとして発信すべきである。
現在、我が国の援助政策は、ODA大綱及び国別援助計画による枠組みにより実施されているが、国別援助計画については援助対象が総花的との指摘もなされている。今後、途上国の援助ニーズに十分配慮しながらも、計画の策定に当たっては、政策対話を通じて援助の供与分野について「選択と集中」を行うべきである。
さらに、援助の戦略性を高めるため、ODA大綱と国別援助計画に加え、「海外経済協力会議」における議論を踏まえ、我が国の比較優位に基づいた地域ごとの援助方針や援助戦略、援助の重点分野などを明示する「地域戦略方針」の策定も検討すべきである。
2.我が国の援助資源の総合的活用と途上国との「互恵」関係
これまで我が国の国際援助はODAを中心に実施され、途上国の「卒業(自立)」を援助理念とし、その自助努力を促すことによって多くの成果を挙げてきた。
しかし、途上国への協力は政府だけで成り立つものではない。途上国の自立のためには、投資の拡大など民間部門の役割が不可欠である。途上国側においても、我が国の民間企業による投資や技術移転への関心は強く、加えてNGOはもとより企業による援助の活発化など民間部門の活動が拡大しつつある。ODAは、これら民間部門の活動の基盤を作り、活動しやすい環境の整備にも重点を置くべきである。
そのため今後は、政府・自治体、民間企業、NGO、市民社会などの連携を強化し、我が国の援助資源を総合的に活用するための枠組みを構築する必要がある。
例えば、欧米諸国においては、対外援助に占める民間資金の割合が極めて高い。我が国においても民間部門の一層の活用を図るため、援助に携わるNGOに対する寄附についての税制上の優遇を始めとした支援措置の拡大等、国内制度の改善に取り組むべきである。
加えて、途上国への民間投資を促すための投資環境整備に対するODAの活用を始め、途上国の潜在力を活かした投資イニシアティブなど政策対話の促進、租税・投資協定の早期交渉等の外交努力を講じ、より強固な政治的・経済的関係を結ぶことが求められる。
さらには、NGOや市民社会の活躍など草の根の交流を通じて、文化交流の一層の促進を図り、途上国との「互恵」関係を築き上げるとともに、地域や国際社会の安定と成長、貧困や環境問題の克服に貢献することが我が国の援助理念であることを確認すべきである。
3.日本型援助の知見を活かした「平和構築」の推進
平和構築はODA大綱においても重点課題の一つとして明記されている。我が国の援助が日本国憲法の精神を踏まえ、非軍事・平和主義という特色をもって実施されてきたこと、また、国際的にも平和構築に対する我が国の役割が期待されていることにかんがみ、今後とも平和構築に向けた協力に積極的に取り組むことが求められる。
特に、戦後の復興経験はもとより、開発援助の実績や法制度整備などのガバナンス支援、環境対策等の技術協力等、我が国が有する比較優位を積極的に活用しつつ、紛争の予防や紛争後の復興、紛争の再発防止などに重点を置いた施策を推進すべきである。
また、「平和国家日本」のイメージを基礎とし、我が国は、和平合意など平和構築の枠組みにより早い段階から主体的・積極的に関与し、現地社会の主体性を尊重しつつ紛争当事者に働きかけるなど、我が国の援助経験による知見を活かしつつも、更に一歩進んだ日本的アプローチによる貢献を展開すべきである。
4.「援助量」大国から「援助人材」大国へ
(1)「人間の安全保障センター(仮称)」の創設
援助分野における人材の育成は、当委員会が最も重要視する課題である。この分野について、我が国は援助予算を飛躍的に拡充すべきである。
特に、戦略的な視点からの援助案件の創造・発掘を推進するための人材や平和構築分野において活躍できる人材の育成・確保は喫緊の課題である。
例えば、平和構築の人材育成においては、平和構築のプロセスが緊急人道支援、開発援助、ガバナンス支援、平和維持活動(PKO)など広範囲に及び、多様な活動を含むことから、これら活動が統合された研修プログラムを構築し、援助専門家の大幅な増員を目指すべきである。
人材の育成・研修に関しては、既に「国際平和協力懇談会」報告書(平成14年12月)において提言がなされており、また、外務省より平和構築を担う人材育成のための「寺子屋構想」が提唱され、防衛省では国際平和協力活動に係る研修センターの設置が検討されている。
このような人材育成に向けた取組は評価できるが、政府、国際協力機構(JICA)等による研修体制は、省庁間の縦割りに陥ることなく、開発援助、平和構築、PKOなど各分野に応じた合理的な分化と適切な相互交流・調整が図られなければならない。
これらの実績を踏まえつつ、将来においては、国内外の実務者、研究者の参加によるアジアでのハブ的機能を有する「人間の安全保障センター(仮称)」の創設を視野に入れ、総合的な研修体制の整備・強化が推進されるべきである。
(2)国際援助活動におけるキャリア・パスの確立
現在、我が国は、援助の現場での経験を持つ人材が正当に評価・活用されておらず、その人的蓄積も行われていない状況にある。また、援助の現場から戻った後の職の確保や収入の問題などがあり、現実として国際援助活動に参加し難い仕組みとなっている。
人材育成に当たり、育成された人材を有効に活用する場が伴わなければ、資源の浪費となってしまう。したがって、自らの経験を活かしながら継続的に援助に携わることのできるキャリア・パスの確立が早急かつ確実になされなければならない。
具体的には、NGOや大学院等の研究機関、民間企業などからの外務省・在外公館等への継続的な登用を含む政府と民間双方向の人事交流、国連など国際機関における邦人職員ポストの確保と我が国援助関係者の派遣、NGOによる援助プロジェクトの促進によるポスト形成などの施策を強力に推進すべきである。
また、将来においては、「人間の安全保障センター(仮称)」における援助関係の人材登録制度の創設や同センターを中心としたネットワークの形成、大学院等の教育機関との連携等をとることで、全国の援助関係者のキャリア・パスの場とし、若年層からシニア世代、自治体職員・ボランティア等の知見・技術を活かすべきである。
(3)新JICA発足に伴う「援助力」の強化
新JICAの発足は、我が国の援助の実施部門の統合に留まらない、新たな援助機関が誕生する意味を持つ。その意味で、新JICAは我が国の援助外交を代表して実施する機関であるとの自覚と責任を持たねばならない。
特に、グローバル化が進展する中で途上国の抱える政策課題は複雑化・高度化し、一方で援助国・国際組織間の援助の質をめぐる競争も激しさを増している。
今後更に、新JICAは単なる援助実施機関に甘んじることなく、途上国の政策課題に迅速、的確に対応し、他の援助国等との関係において援助の質の差別化を図るなど、その援助力の向上に努めるべきである。
また、新JICAは、現地ODAタスクフォースにおける案件形成に当たり、より主体性を持って積極的に関与していくべきである。
5.東アジアの成長と統合に向けた我が国援助の役割
我が国の東アジア諸国への援助は、各国の社会資本の蓄積と経済的自立を促し、アジア地域の経済発展に大きな役割を果たした。
東アジアは、地政学上我が国との関係が深く、今後とも我が国の援助における最大の重点地域であるとともに、この地域が政治的・経済的に安定し、まとまりがあることが我が国の国益にとって最も期待されるところである。
したがって、東アジア諸国の自立や持続的発展を支えるためにも、我が国は今後もこの地域の発展に積極的に関与すべきである。
東アジア諸国は経済の発展段階が多様であることから、諸国間の経済的相互依存が安定的かつ着実に深化するよう、経済連携協定の締結などにより統合への取組を促進する一方で、経済連携協定から取り残される国・地域が生じないよう、援助による地域内の格差是正に取り組むことが最優先の課題となる。
今後、我が国は特に、東アジア地域の核となる東南アジア諸国連合(ASEAN)との対話を進め、ASEAN諸国内の成長と統合がバランスをもって持続されるための援助の枠組みを形成する必要がある。このため、我が国のみならず、特にタイなどASEANの中で援助から卒業間近である国や、新興援助国である韓国などとの援助政策の連携も検討すべきである。
中国の対外援助については、援助に関する国際ルールに従い、透明性を持った形で行われるよう対話を行い、中国に対して国際的な基準にのっとった援助政策を採るよう促すべきである。また、日中間において、援助プロジェクトの共同策定を試みるなど、我が国による援助の枠組みに取り込み、協働していく工夫も必要である。
6.アフリカの貧困削減と支援理由の明確化
アフリカの貧困問題は国際社会における最も重要な課題の一つであり、国連、G8主要国首脳会議などにおいても主要議題とされている。我が国も、過去3回に及ぶ「アフリカ開発会議」の開催を通じてアフリカ支援を積極的に進め、アフリカ向けODAの倍増を国際公約し、来年には「第4回アフリカ開発会議」が開催される。
しかし、国民の間には、アフリカ支援の拡大については疑問の声もあり、今後、支援に当たっては、人道的理由のみならず、国益の観点から十分納得の得られる説明がなされなければならない。
今後は、アフリカの絶対的貧困に係る人道的支援、特に「ミレニアム開発目標(MDGs)」において求められる保健・医療分野などへの支援は継続しつつも、各国の政治・行政、経済状況を踏まえた上で、援助効果を勘案しつつ、援助分野のみならず援助対象国の優先度をつけた上で、めりはりのある援助政策を採るべきである。
また、我が国の東アジアでの援助経験と知見を活用し、アフリカ諸国のニーズと援助の受入れ能力に十分配意しつつ、「貧困削減と経済成長との好循環」を生み出すべく、開発援助を中心に環境や教育支援等、アフリカの持つ可能性を実現できるような援助に重点を置くべきである。
あわせて、我が国単独の援助にとどまらず、アフリカという世界最大の援助課題に対し、欧米等主要な援助国や国際機関との協調を図り、効率的な分業体制の下での援助を一層拡大し、世界の中の日本として期待される役割を果たさなければならない。
7.参議院による援助政策への積極的関与
参議院改革の柱である「決算審査の充実」を踏まえ、引き続き本院はODA等の国際援助・協力に関し、専門的に調査を進めるべきであり、次国会以降も特別委員会の設置等により、継続的な調査の実施と委嘱審査によるODA予算の一元的審査を行っていくべきである。
ODAの効率的・効果的実施のため、政府においては援助における現地機能の強化と現地への権限委譲を一層促進しつつ、目標達成度に応じた評価や、現地ニーズを踏まえた援助案件の形成を行うことが求められるが、本院においては我が国の援助の在るべき方向性を示すべく、政府に対し一層の評価情報の開示を要請するとともに、事後評価に基づく費用対効果の評価を進めると同時に、政策に対する評価についても重点を置くべきである。
また、引き続き、海外派遣調査を実施するなど調査の一層の充実を図り、その成果を踏まえて政府との意見交換を進めることにより、援助予算の大枠の在り方を始め、政府の援助政策について積極的に関与すべきである。
(以上)
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